ゲエム
二十世紀の科学の発展も素晴らしいものであったが、二十一世紀の科学発達はさらに凄まじいものであった。
人口増加に伴う住居の問題を、宇宙に進出することで解決し、食糧問題を遺伝子組み換え技術によって安全かつ短期間で栽培できる農作物を作ることで解決した。また、医学的な面では、クローン技術や培養技術など再生医学の発達により欠損した身体機能を完全に回復させることができるようになった。環境問題に関しても、化石燃料に代わり、再生可能エネルギーを中心とした、低炭素社会を実現させた。それと同時に大気汚染を改善し、オゾン層を復活させることによりオゾンホールを小さくすることにも成功した。
様々な問題が科学技術の発展により解決され、人類の生活は豊かになっていった。
U国という大国の大統領はこのように発達した二十一世紀を『再生の世紀』と呼んだ。
しかし、『核問題』だけは解決されなかったのである。
二十二世紀に入っても核問題は解決されなかった。核廃絶運動は何度もあった。しかし、それによって核が無くなるようなことはなかった。それは第四世界を自称する新興国が次々と台頭し始めたことに起因する。
第四世界とは世界的な科学発達に伴い経済発展をした国々の自称である。その国々は更なる経済発展のための援助を先進国に求めたのである。
核兵器の保有をほのめかしながら。
援助が為されなければ核兵器による攻撃もあり得る、という姿勢を取る第四世界各国。それに対して、核外交を行う新興国を非難する先進各国。両陣営がともに核を保有し、配備を終えるという一触即発の状態が数カ月にわたり続いた。
その均衡を破ったのは過激派が政権を握る先進国のC国であった。
国家元首が、隣接する新興国のN国による核攻撃を恐れ、また、戦争における優位獲得のために核兵器による先制攻撃を行ったのをきっかけとして核戦争が勃発した。
二十一世紀を『再生の世紀』と呼ぶならば二十二世紀は『破壊の世紀』と呼べるであろう。一発の核兵器は核兵器を呼び、瞬く間に各国の主要都市を破壊していったのだ。
C国による核攻撃から数日後、各国が核兵器を使用したことにより核兵器は世界から姿を消した。
これはある意味では核問題の解決と言えるかもしれない。代償として人類は滅亡したが……。
***
「あ! また絶滅しちゃったよ……」
ガラスのような球体を手にしながらそう言うのは少年の姿をしたなにかである。球体の中には黒い靄のようなものが浮かんでいる。
「こないだも絶滅してたよな」
そう返すのも少年の姿をしたなにかである。こちらもガラスのような球体を手に持ち、中にある黒い靄を見つめている。
「なんでだめなんだろう。あのまま発展させられたらお前の
アリ世界になんて負けないのに」
「ヒトは馬鹿だから、ある程度科学が発達すると自滅しちゃうんだよ。あと俺のアリが負けるわけがない」
「そんなんやってみなきゃ分かんないじゃん!」
「いいやわかるね。ヒトを育ててるようじゃ俺のには勝てない」
「じゃあいいよ! そう言うなら僕も今度は違うの育てるから!」
なにかは手に持った球体の側面にあるボタンを押した。すると、ぽん、という音をたて、球体の中にあった黒い靄は跡形もなく消えてしまった。